並木空の記憶録

「紅の空」の管理人2の備忘録

覆面作家企画2 Fブロックの感想

 私と共同管理人の紅和花のブロックです。
 二人分の感想がないので、バレること請け合い。
 ネタバレしているので、推理中の方&未読の方は要注意。
 また自分の力量を棚に上げての、好き勝手な感想なので、辛さは中辛程度。
 甘口しか受けつけない方は、見ないほうが心の安定を手に入れることができるでしょう。



F-01  星

 一人称SF。

 キースは大儲けをして地球凱旋するのを楽しみにしている標準的な船乗りだった。
 目の前には5年に一度出会えるか、わからないビックな代物が。
 それを狙わない手はないとキースは乗り気になるが相棒のビルとAIのジョンがそれを渋る――。

 冒険あり、お涙シーンありとSFらしい展開ですが、とても読みやすかったです。
 散りばめられたSF用語も量が多くなくって、突っかかることなく読むことができました!
 人間くさいAIが良いですね!
 中古船にはナイショがあって素敵だと思いました。

F-02  星の数ほど

 現代恋愛もの

 夜景が美しい貸切のレストラン。豪華なフランス料理のディナー。
 舞台は完璧に整えた!
 が……彼は、彼女に伝えなければいけないことがあるものの言い出せないでいた。

 面白かったです!
 マニュアルにのっとり頑張る彼が微笑ましいです。
 そして待っている彼女の様子もまた。
 料理の描写が上手で、お腹がすいてきました(笑)
 是非ともこのまま尻に敷かれていてください♪
 「星の数ほど」の使い方効果的でした!

F-03  モトラタトラット (ハナモゲトラッタッタ語で「目が覚めたなら」という意味)

 一人称現代FT?

 俺には非凡な才能がある。
 なんと『異世界放浪癖』である。
 思春期が始まったころから起こり始めた現象に、俺は――。

 前半と後半の話のテイストが嘘のように分かれてた話です。
 現代ものというには無理があるような……ジャンル分けなんて無意味だと鼻で笑い飛ばされるような作品だと思いました。
 はじめは会話文のテンションが高すぎて、読みづらかったというか世界に入り込めなかったんですが、中盤を過ぎるころには慣れてきたというか、それどころではないシリアスな話になってきて、スゴイと思いました。

F-04  星に願いをかけてみた

 現代FT。

 会社勤めをしている莢子。ほんの少しばかり喜怒哀楽が顔に出ない。だから、誰も気がついたりはしない。
 いつもの帰り道の途中、公園で小さな少年を見つけて、思わず声をかけた。
 それが不思議の始まりだった――。

 素敵な話でした!!
 地の文の表現力も素晴らしくって、寂しさや悲しみが身に迫ってくるようでした!
 オチも素敵で、まるで魔法みたいな話ですね。
 タイトルも素敵で、それに話がリンクしていて。「かけてみた」と完了形、過去形の形をしているのが良いです!
>ふと見上げた滑り台のシルエットはまるで出来損ないの怪物のようだ。その怪物のてっぺんに、ちょこんと丸まった影がくっついていた。
 このフレーズが莢子の気持ちを代弁しているみたいで、特に素敵でした!!

F-05  夢売りの話

 一人称現代FT。

 会社員のぼくは強かに酔っ払っていた。
 「夢売り」を名乗る人物から五百円でこんぺいとうを買う。
 一日に一粒だけ食べるこんぺいとはぼくに夢を見せてくれた――。

 ずるずると沈んでいくぼくが怖かったです。
 あと一歩のところで踏みとどまってくれて、読み手であるこちらも一安心しました。
 どうなってしまうんだろう。ぼくは夢を売り飛ばしてしまうんではないだろうか、とドキドキしました〜。
 静かな迫力のある作品でした!
 面白かったです。

F-06  翡翠

 和風FT?

 時の帝の第七皇子「翡翠」。
 妓女を母に持つ皇子は籠に囚われて飛べないでいた。
 その傍らで、影のように控える乳兄弟の少年がいた。
 翡翠は己の父から帝位を簒奪しようと決意した――。

 直感で「和風」と断定。中華風だったら、ゴメンナサイ。
 太刀とか皇子とか腰刀とか、和風かなぁ? と感じました。異世界FTの区分って難しいですよね〜(汗)
 王道ってぐらいお約束な展開をてらいなく書ききったのが素晴らしいです!
 翡翠の決意や母の哀しみを書き込んだら、もっと面白くなったんじゃないかと思いました。枚数制限に頭を悩ませたんじゃいかなぁと勝手に想像したりしました。
 これだけ流血、残酷シーンを描いてしまったんだったら、もっと気合を入れて殺害シーンを濃厚に積み上げていくのもありかなぁと思いました。……読み手を選ぶような作品になっちゃいますけど(汗)
 まだ色々できそうな作品ですが、制限を受けたので、力を出し切れなかったんじゃないかというイメージを受けました。

F-07  ぷっぺ 〜星の妖精〜

 一人称FT。

 妖精のぷっぺの語り口は軽妙。
 彼が自慢げに語るのは、こんな夜にはぴったりなとっておきの話。
 星の妖精が話すのは、この広くて大きな世界のドキドキしてワクワクするような秘密。

 童話風? かなぁ。メルヘンなお話でした。
 語り手がちょっと不明〜。たぶん、まだ子どもか、子どもっぽいところを残した種の妖精なのでしょうか。性別も良くわからないので、ボクだから男の子かなぁ……と。とにかく中性的で、年齢不詳。ミステリアスな存在なので、不思議さは始終漂っていました。
 話にアンバランスさを感じてしまったのが残念です。出だしの感じからいうと、話し終わった後をもう少し書き込んでも良かったかなぁ、と思いました。そうしたら「とっておき」な感じがもっと出たと思いました。

F-08  流星の夜、金の風吹く

 SF?

 科学と魔法が共存する世界で、船乗りのジズは不運な事故に見舞われた。
 それを助けたのはノイと名乗る少女。
 しっかりものの彼女は笑うと年相応に幼い。

 星が花畑になる日がやってくると良いですね!
 思わず祈らずにはいられないノイの可憐さとジズの不器用な生き方に、やられました!
 科学と魔法が共存する不思議な世界をもっと読んでみたい。設定を知りたいと思いました! 枚数制限に阻まれてしまったんでしょうか(汗)
 タイトルの「流星の夜」という中に深い意味がこめられていて素敵でした。

F-09  カフェ・アルモニカ

 幻惑的なグラスハーモニカを名物にするカフェがあった。
 半地下のカフェで神秘的な楽器を奏でるのは美しいマリー。

 透明なガラスの中に入っているように感じました。
 距離感がつかめない酔いそうな文章が魅惑的な笑みで近寄ってきて、とらえどころがないに気がつけば抱きしめられているような感じで、素敵でした!
 聞き覚えのない楽器で思わず検索したんですが、実際に聴いてみたくなるような魅力的な楽器のようですね!
 その音が今にも聞こえてきそうな、素敵な作品でした。