並木空の記憶録

「紅の空」の管理人2の備忘録

覆面作家企画4 Fブロック感想。

 ネタばれに考慮しているつもりですが、考慮し切れていません。
 未読の方は注意。


 推理のきっかけメモつき*1です。
 難しい漢字の基準は「自分」です。特徴的な熟語、言葉選び、変換をしている場合も、難しい漢字に入れていることがあります。

タイトル考

 タイトルに「☆」が入っている作品は、全84作品中2作品。
 その2作品ともFブロックです。
 一方は「ひらがな」、残り一方は「カタカナ」です。
 個性的です。

印象

 現代もの(FT)の帰り道は夕方である! が、Fブロックのお約束。
 4作品ありました。F01、F02、F08、F09
 学生が多いためでしょうね。
 学生が出てくる作品は8作品! おそらく最多か、と。


 Fブロックは難解な表現を避け、平易に徹した、読みやすい文体が多かったです。
 主人公の年齢が低く設定されているせいでしょうか。
 この読みやすさが曲者で「あなたが信じているものはホンモノ?」みたいな、読み始めの印象と読後の印象がガラッと変わる作品が多いです。


 現代もの(FT含む)は6作品。
 一人称は7.5作品と多め。
 恋愛要素のある作品は5作品。ちょっと多め。
 Eブロックと打って変わって真っ直ぐな恋愛が多い。

注意書きがないけれど、念のため*2

 F09 PG‐12*3
 F10 流血、PG‐12
 F11 PG‐12*4
 F12 流血




F01  より道 (現代もの 一人称)

 閑散、失敬、夕陽など難しい漢字を使用。
 さみしく、ぶっつけて、ふり向き、むつかしい、カワユイなど特徴的な言い回し。


 サッカー部の三年生のマネージャーと次期部長の、甘酸っぱい青春もの。
 友だち以上恋人未満という、宙ぶらりんの関係が上手に描かれていて、素敵でした。
 “あ軽い”感じの高村君にニヤニヤしながら読んでいったら、最後までニヤニヤしちゃう作品でした。
 テンポの良いセリフの掛け合いに、口語に近い文体で、「高校生」らしさが出ていて良いですねー。
 爽やかな印象が残るラストシーンが好きです。
 はぐらかすんじゃなくって、助走準備みたいな感覚があって……、キレイな情景だなぁと思いました。

F02  ばみゅーだ☆とらいあんぐる (現代FT? 一人称)

 ルビ。

 
 裏切られた! ラノベで恋愛モノだと思っていたら、黒服なんて出てくるし!!
 面白かったです。すごく面白かったです。
 お約束展開がこれでもかと突っ込まれていて、笑いました。
 冒頭のせいで、主人公の大吾が伝説の桜の木で告白するのかなぁ? なんて、暢気なことを思っていました。
 それが、まさかの展開!! 笑わせてもらいました。
 あだ名って大切ですね。
 さりげなく過去のお題「花(桜)」「星」「空(空き地)」を解消していてスゴイなぁ、と思いました!

F03  魂に著作権はない 注 (SF 三人称)

 「△」場転記号。


 スミマセン。何度読んでも「バディ」の意味がわからなかったです。
 “buddy system”のバディかなぁ? と、思いながら読みました。間違っていたら申し訳ありません。


 最初はタヨもヨリカのように、どこかに実存する人間なのかな? って思っていましたが、後半になって違うことに気がつきました。
 タヨはヨリカを管理する、もっと上位の存在なんですね。
 地球の裏側に居るのか、それともヨリカがそう思っているだけで、他の場所に居るのか。
 与えられるだけの、足し算しかない幸せの中で、孤独になるヨリカの抵抗と、結局はタヨに頼ってしまう弱さが魅力的でした。
 今の世界を否定しながら、バディであるタヨが居る世界に甘えている。
 その矛盾が良いですね! とても考えさせられました。

F04  境界線上の魔王 (異世界FT 三人称)

 “”を使用。

 
 伝説を唄うは吟遊詩人。
 前半は唄われているような、リズミカルな文体で、語られる話も吟遊詩人がお得意の幻想物語。
 そして、後半は種明かし。ライトな文体でつづられる損な役割の魔王様!
 人が好すぎるでしょう! 苦労性ですね!
 飄々とした吟遊詩人も素敵でした。
 キャラクターが魅力的です。
 最後の一文が、また伝説につながるという展開が素敵でした!

F05  宙の道しるべ (SF 一人称と三人称)

 「++++++」場転記号。


 SFで設定がてんこ盛りなのに、情報の切り出し方や説明が上手で、読みやすかったです!
 語り手の「わたし」のおかげで作品に入りやすく、さらに広がっていく未来を感じることが出来ました!
 ロマンティックな話ですね!
 博士ことロイディが星に語りかける情景が美しかったです!
 回想を挟んだことによって、後半のシーンも際立って、……ロイディが報われて良かったです!!
 テレパスの使い方が効果的で、印象的でした!
 ヒルディアがテレパスじゃなければ、この美しい情景は成り立たないっていうのが巧いです!
 「花(薔薇色)」、「星」、「空(空間)」と過去のお題消化も巧みだなぁ! って思いました。

F06  落とし物 (現代FT 一人称)

 嘘吐かない、撥ねられた、頷いてなど難しい漢字の使用。


 最初は「僕」視点の睦美ちゃん一家の日常を描いたほのぼのストーリーかなぁ。と思っていたんですが……、切ない!!
 切なすぎるーー!!
 博士が同じ話をくりかえすのは、それだけ大切だってことですよね。
 チャロを覚えているっていうのは、忘れてしまった記憶の中に、引っかかるカケラがあるからですよね。
 そういうすれ違いが、やさしく描かれていて、切なさ倍増です!
 物語の世界にすいっと引きこまれました!
 最後にチャロが道へ行ってみようか、と思うのが深いなぁと思いました!

F07  偽りだらけの道筋 注 (時代もの 三人称)

 「?」「!」の後、一字空けをしない。
 矢印記号の使用。


 西部劇!! 渋い、クール、ロマンですね!!
 カッコよすぎる!!
 セリフが、西部劇ど真ん中!
>明後日おいで!
 を、不思議に思いながら読み進めると、明後日に事件が起きる。読者に気にかけさせるという一点だけでも、効果的なセリフですね!
 ジョニー・ボーイの名前の由来といい、そこから広がるエピソードといい、洒落が効いていてカッコイイ!
 生き生きとした字の文での描写も素敵です。テンポがあって、物語が加速していく展開が良いですね。
 マディがとても魅力的でした!
 明るいだけじゃない、生きていく強さが備わっていて、西部劇に相応しいヒロインですね!

F08  からたちの歌 (現代FT 一人称)

 慌てて、曖昧など難しい漢字を使用。


 怖っ! 終わらない輪唱って!
 読みやすい文体に釣られてのこのこと読み進めていったら、現実が崩れたんですけど!!
 だから、一人称だったんですね! これだったら、不自然さが薄れるから!!
 コウスケと僕の会話も、字の文も、少年らしくって、リアリティがありました。
 流れるような展開も素敵でした!
 だから、女の子の話辺りで、うわぁっ! と驚きました。

F09  シーキング☆ザ・プリンセス (現代FT 一人称)

 「!」に一字空けをしない。
 「―――」三字で使用。「………」三字で使用している場所もあり。
 行頭に字下げをしない。


 思わず、笑っちゃいました。
 いや、おかしいぃ!! 笑える!!
 悲惨な経験だってわかってますけど、これは笑わずにはいられない!!
 莉真も悠一郎も着眼点が面白い! 柔軟な発想で、若者らしくって良いですね!
 冷淡どころか、皮肉ってるんですけど、けなしまくってるんですが、それだけじゃなくって「愛着」ってものがあるんだなーと会話の端々に感じられて。
 表現の一つ一つがツボでした!
 今度こそ、幸せになって欲しい!!

F10  ひとつの道からはじまる (異世界FT 一人称)

 《》の使用。
 「◆―――◇―――◆」、「* * * * * *」場転記号。
 「―」、「…」を2セットで使用しない。
 行頭に字下げをしない。
 「蹲る(うずくまる)」とルビを振る。


 前半パートの主人公のマルガも、そうとう悲しい生い立ちしていますが、中盤パートの主人公の少女は悲惨ですね。
 年相応の理解力しかないから、よりいっそう憐れだと思いました!
 少女の目を通して語られた出来事が……! ママの幸せを祈っちゃうなんて!!
 弟を妬んでいたはずのマルガが、同時に弟を愛していたと気がつくところが、特に好きです。
 だから、少女に声をかけたんだなぁ、と。
 10年という歳月がマルガにも流れたんだな、と。
 これから幸福になっていくんだ、とわかるラストシーンも素敵でした。

F11  あわい物語 (現代FT 三人称)

 「義希(よしき)」とルビを振る。


 うわぁ、怖い!!
 冒頭の道の描写が綺麗でした! 
 闇のように黒い世界の中にある白い道なのに、不安定なイメージがあって。これから起こる数々の出来事を暗示しているようで。
 分かれ道で、白い道が燃えたところは、ドクンッと心臓が飛び跳ねました。
 義希の幼いゆえの罪が次々に暴かれていって、もしかして……とビクビクしていたら、鮮やかな場面展開。
 死神さんが素敵でした!
 言葉遣いも、仕草も、華があるというか、ミステリアスでこういうキャラクターいいですね!

F12  誰そ彼は (現代FT 一人称)

 文化祭のお題。これが巧いなぁ、と思いました。こういう使い方、好きです。
 色が象徴的でした。何度もくりかえされる「赤」という単語。
 怖い、というよりも綺麗だと思いました。
 きっと“私”の赤い空にたいする想い出が美しく、輝いているから。だと思います。
 家族でキャンプにいった想い出の中の「赤」が永遠に続いている気がしました。
 淡々としていた“私”が不思議と似合う世界ですね。

*1:推理はしていません!

*2:基準は自サイトです

*3:直接的な描写はないものの、エログロ有

*4:犯罪行為