「カレーライスが食べたい」
そんな言葉が知人から出た。
スマホが賑やかな通知音を鳴らしたので、買い物中のわたしはメッセージに気がついた。
友人に格上げしてもいいとは思う男性だが、どうにも恋人までには昇格はさせられない。
そんな相手だ。
高校時代からの腐れ縁で、お互い決まったパートナーを作らない方針なせいで、時たま『甘え』のような発言が出る。
わたしがパートナーがいないのは、性格のせいだろう。
どうにも、利用されやすい体質で今まで見てきた恋愛は、昼ドラの方がマシなぐらいの泥沼恋愛ばっかり。
知人の男性は除く。
となると、おっかなびっくりになって、淡い片想いのまま終わったり。
それを引きずって拗らせたまま社会人になってしまった。
そういえばバスケ部で活躍していた高校のクラスメイトの彼も恋人とゴールインしたと、と女友だちから話が回ってきた。
失恋した、とかではなく、ご祝儀貧乏になると言った発想の方が早かった。
披露宴のためのワンピースも新しく買わなければならないだろう。
男性はブラックスーツでネクタイを変えるだけでいいよね、と知人の男性にこの前、愚痴ってしまった。
わたしは恋愛には憧れるけど『怖い』のが正直なところ。
でも独りじゃ寂しくて、それを埋めてくれる知人の男性を利用している。
「明日は金曜日の夜だね」
わたしもカレーライスの件に対して答えた。
何故、金曜日の夜がカレーライスなのかは無知なわたしは知らない。
何となくそんなルールというか、規則があった。
実家ではそうだった、というわけでもない。
知人の男性の中での法則だ。
私は献立を決める手間が省けたと思った。
カレーライスと言っても色々ある。
具材だけでも味が変わるし、最近は手軽にキーマカレーやバターチキンカレーを作れるようになった。
スパイスからセットになっているものが、もっとお洒落なスーパーには並んでいる。
キットを買ってきて煮るだけなんだから、お手頃だろう。
「横須賀海軍風カレーがいいな」
知人の男性の具体的なリクエストに、ちょっと面倒になったなぁ、とわたしは思ったぐらいだった。
いわゆるジャガイモ、ニンジン、タマネギと肉が入るデフォルトのカレーだ。
各家庭の方針なのか。
肉が問題になった。
肉じゃがから生まれたカレーなんだから、牛肉だとか、今は豚肉だとか。
使う肉の部位までトラブルになった。
私は面倒だったので、カレー、シチュー、肉じゃが用と大きく印字されている野菜の水煮に、カレー用とラベルが貼ってあった牛肉を買い物カゴに入れていく。
家にルゥがあったので、特売じゃなかったから見送った。
帰宅後の晩御飯になるお惣菜の他に増えたカレーライスの材料分、エコバッグは重くなった。
サービスで知人の男性が好きな缶ビールを一本、追加しておいた。
材料費と光熱費と手間代を差っ引いても余るぐらいの金払いの良い知人の男性相手だったし、独りで食べる食事の時間の切なさを考えたら、こちらがお金を払った方がいいような気がする、と思うぐらいだ。
残業続きで重くなっていた足取りだったけれども、アパートが近づく頃には軽くなっていた。
肩にかけたエコバッグはそれなりに重量があるのに。
カレーライスという単語にはきっと魔法がかかっているに違いない。