並木空の記憶録

「紅の空」の管理人2の備忘録

覆面作家企画4 Aブロック感想

 ネタばれに考慮しているつもりですが、考慮し切れていません。
 未読の方は注意。


 推理のきっかけメモつき*1です。
 難しい漢字の基準は「自分」です。特徴的な熟語、言葉選び、変換をしている場合も、難しい漢字に入れていることがあります。


 自ブロックなので、自分の作品がどれだったか、バレが書いてあります。


 感想を書いたのは09年8月1日。

Aブロックの印象。

 変わったタイトルが多い?
 文中記号に【】の使用が多い?


 一人称は5作品。
 現代ものは2作品。
 SFが2作品。
 恋愛要素のある作品は4作品。
 戦争もの(戦時下、兵法、未遂を含む)が4作品。


 一見すると、問題児が悪目立ちなAブロックです。
 実は、今回の企画の標準の枠に収まる作品の方が多いんですが……、そうは見えなかったり。
 意外に平均的なブロックでした。少なくともジャンルは。

タイトル考察

 タイトルが“ひらがな”で構成されている作品は84作品中2作品。
 2作品ともAブロックです。


 物議をかもしたとんでもないタイトルが2つもあるブロック。
 その1 最長タイトル
 84作品の中でもぶっちぎりの長さのタイトルを持つA01。


 その2 記号のみで構成されたタイトルA02*2

注意マークはないんですが、念のため。

 A03 障害者、戦火もの、宗教色あり
 A05 人体損壊、怪奇(グロテスク)もの
 A06 行き過ぎた友情(?)
 A09 殺人





A01  締切直前における特定の覆面作家企画4参加希望者の漸近線的記録あるいはマグネシウム燃焼時的アイデア(現代もの 一人称)

 タイトルが論文風。また文体もそちらより。
 【】、〈〉、“”、《》の使用。数字は全角アラビア数字と漢数字。


 タイトルからして奇抜!
 畑違いだったのもあって、マグネシウムの燃焼の実験をWEBで検索してしまいました!
 微笑ましいやりとりをする二人の学生の話ですが、主人公がWEB作家という設定のせいか、わかるわかる! と共感するエピソードが散りばめられていて、面白かったです!
 あーでもない、こーでもないとネタ出ししているのが、「読んでみたい!」と思うネタばっかりでした。
 ベタ展開、良いですねー。
 【あす夜】が読みたくってしかたがないです!
 少女向けの小説にありがち展開の話をしながら、比喩表現が理系でアンバランスなのが、良かったです。
 地に足が着いた作品だと思いました!
 

A02  □□■□□   □□□■□

 自作です。

A03  アガトの巡礼(異世界FT 一人称)

 三点リードではなく「、、、」を使用という特徴のある文体。
 嚥下、歳よりも、粥、憐れむ、云ってもなど、やや難しい漢字を使用。
 障害者(口がきけない)が視点人物であり、戦火もの。


 別世界への穴に飛び込まない主人公。
 見事などんでん返しです。
 アガトの信者のおばさんとふれあって……というストーリーから、おばさんの見たかった世界を見にいくというオチを期待しがちですが、斜に構えたところのある主人公のせいか、EDにも納得。
 希望が薄い展開というか、シリアスというか、表現のしづらい作品でした。
 被災者の手記(しかも翻訳!)を読んでいるような錯覚が起こりました。
 近いんだけど、遠いみたいな。
 主人公があまりに淡々としているものだから、より凄惨だと感じました。
 感情が削げ落ちちゃっているのが、より悲しいと思いました。

A04  クロランドの流れ矢(異世界FT 三人称)

 凄んだ、桟、捻って、難しい漢字も少々。
 吉祥、木場、山彦と普段は和物も書いている? ような熟語が少々。


 流れ矢の使い方が上手い!
 物語の冒頭から終わりまで、まさに矢のように一貫しているのもスゴイ!
 娘に良縁をと願う父アリンと、おっとりしているように見えて芯の強い母コーラの掛け合いも面白かったです!
 主役は間違いなく父親のアリンですね!
 娘の髪をほどくシーンが意味深だなぁと思いました。
 カラバドのお坊ちゃんらしさも良かったです。キャラクターが立っているなぁと感じました。
 矢じり一つで大騒ぎした話に、相応しい〆かたも素敵でした!

A05  狼は邪心を知る(異世界FT 三人称)

 鼻腔、頭皮、瞼、泥濘、耳朶などやや古語の多い特徴のある文体。
 泉鏡花を思い出すような美麗美文調(と、○○)。


 冒頭で魚と思っていた彼女は、人間で、しかも首だけの状態。
 話し相手は大蛇。
 繊細な描写と古典的な表現のせいか、能(戯曲)でも見ているようで。芸術まで昇華していますね!
 グロテスクさが、作品の奥行き(幻想的な華やかさ)を出しているような気がしました。
 そして、最後のエピソード。
 一瞬、読み聞かせ物? で、現代もの? って思っていたら、さらにどんでん返し。
 「道」の由来という設定が面白かったです!
 こういう使い方があるんだなぁ! と。
 オチの落ち方がすごい好きです。

A06  たとえ何があっても(異世界FT 一人称)

 煽ったなど、少々難しい漢字を使用。
 おそらく戦時下にある、王国の(魔法)学院もの。
 兵法をある程度知っており、そういったものを書いているような展開。


 俺の友人は、先の大戦で敗れた将軍の孫で、学年主席で、頭が切れるが、対人関係は難ありと……魔法が持ちこまれていなければ、まさに王道展開。
 機動力を上げ、短期決戦かぁ。
 これを「机上の空論」という辺りの文明度合いもバランスが良くっていいですね!
 「新型の魔術制御式二連大砲を地中に放棄」したのは、やっぱり敵側に回収されないためなのかなぁーと、妄想が止まらなかったです!
 喧嘩を売らずにはいられないクェスの性格が魅力的でした!
 本当は長い軍記もので、これはその一エピソードなんだろうな! というような気がしました。
 この話の前後のエピソードがあるなら読んでみたいと思いました!

A07  ドM道 (FT 三人称)

 近未来もの?
 携帯電話など小道具が特徴。


 本当に「ドM道」で「道なる生物」でした!
 言葉の意味を深く深く考えさせられました!
 物語はコミカルなタッチで進んでいきますが、ちょっとしんみり。
 その按配が良いです!
 クロードに好感が持てました!
 弟の才能を羨ましく思いながら、やっぱりお兄ちゃんしてしまうところなんかが、「いい人だなぁ」と。
 ほの暗ーいことを考えながらも、兄弟助け合って、未確認生物の研究を続けるんだろうな! と、思ったりしました。

A08  大都会の秘密基地 (現代もの 三人称)

 と言うの使用が特徴。です、ます調。
 括弧に【】を使用。全角アラビア数字と漢数字。!、?は半角。
 舞台は埼玉県。三郷市の中川水循環センター?
 土地勘のない人には書けないので、埼玉在住・勤だと思います。
 東京、千葉にも舞台になりそうな下水道見学を実施しているセンターがあるのに、埼玉。ってところが。


 地名を見て、あわてて調べてしまいました。
 タイトルの大都会から「都市部らしいので、県南」と推理。
 中川水循環センターの真上では、サッカーができるらしい。
 次点は荒川水循環センター。
 地図とにらめっこしてしまいました。
 そんな推理がしたくなる作品。
 爽やかな夏の思い出。まさに夏休みといった雰囲気の物語ですね!
 少年が泥んこになるまで遊んでいるイメージです。
 夏の日が、巡りめぐって現在につながっているのも素敵でした!
 

A09  空の果て、あの道に (FT 三人称)

 平易な表現と合わせて、双眸、凪いで、喚いても、嵌められ、瞼、憧憬などやや難しい漢字を使用。
 キャラクターの名前がキリなど二文字でそろえられている。


 キリの名前の使われ方が独特でした。
 気になったのは舞台の背景。
 姉の恋人であり、幼なじみのヨウが死んだ理由。
 主人公のレンは生き残り、たくさんの人の血でこの手を汚してきた。と、あっさりと流された経過が読みたかった!
 枚数の都合などがあったのかもしれませんが。
 恋を知って、それで死んでいくレンがかわいそうでした。
 描写が美しければ美しいほど、牧歌的な想い出が綺麗であれば綺麗であるほど、その最期が悲しいです。
 おそらく満足してレンは逝ったのだとは思うのですが・・・・・・。

A10  月のゆりかご (SF 三人称)

 変換忘れの「,」を発見。普段は半角の句読点をタイプしている?


 現代もの? 近未来もの? と思いながら読んだら、遠未来のSFでした。
 やさしい表現で描かれていたので、SFにあるとっつきの悪さを全然、感じず、するすると読めました!
 「二千四百七十三年」のところで手が止まりました。
 ビックリしました! そのビックリさが良いですね!
 不老長寿を手に入れる技術が面白かったです。
 滅びに向かうように見えて、また新しく始めることができる。
 そんな風に物語の世界が設定されていて、スゴイと思いました!
 希望のあるラストが気持ち良かったです!

A11  かえりみち (現代FT 一人称)

 場面転換に「*」を使用。


 切ないーー!!
 途中から、そんな予感はしていたんですが、瑞希がやっぱりそうだったのが切ない!
 別々の人生を歩んでいく二人に納得しつつも、切ない話だなぁと思いました!
 綺麗な話でした!
 夏らしい題材で、爽やかさもあって!
 もどかしい少年少女の感情の交流もあって!!
 んー、でも、やっぱり、切ないです。
 そこが良いポイントなんですけど!

A12  もんどう 注

 うわぁぁぁぁ!!
 確かに「注意」が必要な文章だった!!
 いい意味で裏切られました!
 最後の一行が良い味、出しています!
 文句なく面白かったです。

*1:推理はしていません!

*2:正直、すまなかった