ネタばれに考慮しているつもりですが、考慮し切れていません。
未読の方は注意。
推理のきっかけメモつき*1です。
難しい漢字の基準は「自分」です。特徴的な熟語、言葉選び、変換をしている場合も、難しい漢字に入れていることがあります。
タイトル考
「道」の漢字を使用する作品が5作品*2。
Cブロックと違い、純粋に「道」として使用しているケースばかりです。
印象
現代日本が舞台の作品が10作品。最多ブロックです。
一人称は7作品と多め。
Fブロックとは打って変わって「一般小説」の作品が多かったような気がします。
12歳以上に読んで欲しいと思うテーマが多いです。
昭和という原風景を持っている三十代以上*3の人が読むと楽しい作品が多かったのかも。
とにかく「濃い」というイメージがあります。
注意書きがないけれど、念のため*4
G01 PG‐12
G10 戦争もの
G11 PG‐12
G12 PG‐12
G01 柵の向こう側へ (異世界FT 三人称)
引き摺り、心躍らせる、瞼など難しい漢字の使用。
一六才、一〇歳前後、十数年など、特徴のある変換。
レクスが魅力的ですね! 厩舎の描写を読んだときから、この風変わりで素敵な生き物が自由を得たとき、どれだけ輝くんだろう。なんて、妄想していました。
だから、ラストシーンは良いですね!
主人公のエヴァが旅立つ情景に相応しくて、カッコイイなぁ! って思いました。
レクスとエヴァが「柵の向こう側へ」行くっていう構造が好きです。
不思議な生き物と少女の絆が、怒涛の展開の底に流れていて、とても素敵だなと思いました!
狂言回しの少年が好みでした! 達観した雰囲気が良いですね!
G02 ノストラダムスによろしく (現代もの 三人称)
「――」の後に句点がない。
あはは! すれ違い!! 王道展開ーー!!
文句なしのラブコメですね!
落とし所も良くって、良い爽やかさー!
「ノストラダムスの大予言」も懐かしいですね! その懐かしさが良い味です!
十年前なんですね。26歳になった二人が「そんなことあったよね!」とか想い出話をしていそうだな。って。
そんな安定感のある作品で、面白かったです!
G03 ――み・ち―― 注 (現代もの 三人称)
ホラーかと思ったら、現代小説だった。そんな驚き。
えーっと「純文学」で良いんでしょうか。読み慣れていない系統の作品です。見当違いのこと言っていてもスルーしてやってください。
エログロですねー。この系統を書くんだったら、もっと書き込んじゃっても良いんじゃないか! とか、思ったんですけど。
でも、それだと企画に参加できない? という事情があるのかなぁ。
乾いたリアルさが嫌らしいほどゾクゾクする作品ですね! (褒めてます。褒め言葉です)
彼女の歪みっぷりがいい!
無味乾燥なぐらいパサパサッとしたセンスが良いんですよね。
何も執着していないようで、他人を傷つけずにはいられなくって、依存していて。
ほの昏い世界で座り込んでいる光景が、危うくって……妖艶というんですか。アンバランスで魅力的でした。
虚構に見えないリアリティが素晴らしかったです!
G04 道端の石 注 (現代もの 一人称)
奇妙な親子関係だ。女が俺を殺さなかったのは「情」もあったんだろうけれど、主人公への「復讐心」や愛情と混沌としている「憎悪」や「独占欲」もあるんじゃないのか
な? と、妄想してみたり。
ドロドロしているんだけど、俺の視点が淡々としているから、悪くない。どころか、そこが良かったです。
俺は人間を殺せたけれど、女は人間をひとりも殺せなかった。
作品の構成が巧いな! 対照的でカッコイイ!! と思いました。
俺も女も魅力的なキャラクターだったので、作品にぐいぐいと引きこまれました!
G05 素晴らしきベタな日 (現代もの 一人称)
紛れもない、剥いている、彷徨わせる、咥えた、賭して、唸った、睨みつける、獰猛、衒いもなく、訝しげな、など難しい漢字を使用。
>今日は凄く真面目に部活動やっている気分だ
面白かった! “僕”の視点、面白すぎ!!
『ベタ研』素晴らしい!
ただのコメディかと思ったら、部長が良いセリフ言うしさ。“僕”の着眼点が鋭いしさ!
これは、ほんのり良い話系かと思ったら、ベタなコメディでさ!
キャラが濃いんだけど、嫌味のない濃さでさ!
全部、素敵すぎる!!
面白かったーー!
G06 深紅の森 (異世界FT 三人称)
潜り抜け、滴り落ちる、人喰い、幾人、纏い、聳え立っていた、躊躇わずなど難しい漢字を使用。
三点リーダの後に句点なし。
“”の使用。
全角アラビア数字の使用。
小道具「蛍光シール」
フォルスが生き生きしていて魅力的でした。セリフの一つ一つが飾り気がなくって良かったです!
作中の色が鮮やかで、良いアクセントだなと思いました。
緑から始まって、赤、白。そして、また緑。この色の変化が良いなぁって思いました!
トレジャーハンターでも欲深ではなかったフォルスだから、『道』に出会えたのでしょうね。
陽炎の樹を悪用しようなんて、微塵も思わず、“真っ直ぐ”に帰り道を急ぐフォルスに好感です!
G07 父へ (現代もの 一人称)
ああ、なんて、素敵な作品なんだろう!!
瑞々しい感性がにじむ文体でつづられているコレは卑怯です!
どこにでもあるような日常で。事件ってほどの事件じゃなくって。それなのに、こんなにも深い余韻が残るなんて!
感服しました。
言い訳に言い訳を重ねて理屈っぽい“私”が、最後に父に会った瞬間。
>最初は赤の他人の中年オヤジが相手の文面でも、最後はちゃんと父宛の文面になっている
ように、ちゃんと“親子”の再会シーンになっていて、じぃーんとしました。
>持ってきた予備の封筒の宛名に「お父さん」と大書する。
この一文に、“私”の複雑な心境がこめられていて、胸を打ちました!
G08 かつて歩いた道 (現代もの 一人称)
疲れてるな、が読了直後の感想。
現実は“疲れている”って言い訳を許してはくれない。
当たり前のことを容赦なく突きつけてくる作品でした。
主人公“わたし”は女友達からも羨ましがられるほど充実している人生を歩いている。……はずなんですよね。深いなぁって思います。
冒頭から終わりまで“疲れた”女が一人いるって、雰囲気で。
その重さがスゴイなぁって。
ポキッと折れてしまいそうな微妙なバランス感覚が、文章の端々から漂ってきて、作品を作り上げていて。
逃げのない展開で素敵でした!
G09 畦道の少年 (現代もの 三人称)
夏だ。間違いなく田舎の夏だ。夏の暑さまで感じてくるような「夏」ですね!
アイスキャンディー、ペットボトルと小道具が効いています。
はしゃぐ少年たちの声が聞こえてくるような気がするほど、「夏」の雰囲気が素敵でした!
彰吾と昌浩の掛け合いが面白くって、テンポが良くって、すいすいと進む物語の展開も楽しかったです。
ラストシーンの二人の会話を読んで、「夏」だなぁとしみじみと思いました。
「夏」の素晴らしさを余すことなく詰めこんだ作品ですね!
G10 草いきれの道 (時代もの 一人称)
誰かに読まれることを願って書かれた手記のような作品ですね。
寡黙で、戦争中にあった出来事を子や孫にも語らず、静かに8月15日という日付を迎える老人が浮かび上がりました。
枯淡とした味わいのある文体が良いですね!
>私の地獄はそんな貌をしている。
あっさりとした響きがあるのがスゴイんですよね。
気負いなく言っている。って感じられて。
長い時間をかけて記憶は風化されて、贅肉を削げ落とした思い出として何度も胸に去来する。
そういったことが想像できる一文です。深いなぁと思いました。
G11 旅は道連れ世はソーダ味 (現代もの 一人称)
浩太くん、可愛いなぁ! 男の子だ! “夏休みの冒険”だ。
いい話だぁーー!
出てくる人、出てくる人、その人なりの人生を抱えていて、すべてがうまくっていないんだけど、それでも“やさしい”のが素敵でした!
子ども、女子高生、老人、大人と登場人物はバラエティに富んでいて、全員が魅力的。
ちょっと怒りっぽいお母さんも、“ソーダ味”のアイスを食べるんだろうな。と想像できるラストシーンが、ほんわかしていて良い!
浩太くんの語りが男の子していて、一緒に冒険をしたみたいな感じがして、とっても楽しかったです。
G12 エバーグリーン (現代FT 一人称)
最初の一文から「2」という数字が惹きつけられました。
“二本”の電車と“二本”のバスでたどりついた先で“二本”の脚を見る。
「わたし」とウタさんの“二人”。
“二時”には間に合わないかな。“二十分”しかない。
それを埋めるように「1」という数字が並んでいて。
すごく感覚的な作品だと思いました。……感想が書きづらいです。
「わたし」ことミツの情報が極端に絞られたまま、話が展開していく。
>思えば、わたしはこのひとのことをほとんど何ひとつ知らないのだ。
>このひとの本当の名前を果たしてわたしは知っていただろうか? 出身も、家族構成も、職業も、好きな食べ物も、住んでいる場所も。わたしは何ひとつ知らない。何も知らないひとと、わたしはこんなところまで来てしまった。
ちょっと長い引用ですが、まさにこの気分でした。
「わたし」のことを何も知らないのに、読んでいる。
この不思議な感覚に酔いそうでした。