「もう、花薔薇も終わりね」 薔薇と同じ色をした空の下、少女は言った。 「はい」 少女よりも小柄な少年は、うなずいた。 葉は緑から、赤紫へと変わっていた。 間もなく、枝は葉を落とすだろう。 橙色の花薔薇も、数えられるほどしか咲いていない。 冬の足音が近づいていた。 「お母様はこの花が大好きなのよ」 男のような格好をした少女は、薔薇よりも鮮やかに笑う。 肩口で切りそろえられた髪がサラサラと流れて、綺麗だった。 夕焼けの中、もっと赤い。 「わたしも大好き」 ホウチョウは二つ名の通り、気ままに歩き始める。 ソウヨウは慌てて、それを追いかける。 薔薇を縫うように敷かれた小道を二つの影が歩いていく。 一つは弾むように、もう一つはまごまごと。 背の高さ分、歩幅が違う。 同じ年頃の少年と比べても、まだ背が低い少年にとっては、歩くというよりも小走りといった雰囲気となる。 「シャオは?」 ホウチョウは唐突に振り返る。 赤メノウのような瞳がソウヨウを見つめる。 花など、どれも同じだった。 食べれるのか、薬になるのか、そうではないか。 その区別しかなかった。 答えは一つ。 「好きです」 ソウヨウは答えた。 チョウリョウの長であるシユウが最も愛する子ども。 それに逆らう理由はない。 ソウヨウの答えで、シキボの命運は決まる。 少年は、どんな問いかけにも「はい」と返事をしなければならない。 「本当?」 胡蝶の君は、パッと喜色を顔に浮かべる。 無防備で、無頓着な笑顔だった。 「じゃあ、来年の花薔薇も見ようね! 約束よ」 ホウチョウは言った。 「はい」 ソウヨウは考える前に、うなずいた。 (慶龍九年:フェイ・ホウチョウ、シ・ソウヨウ)
今日で答え終わり
ワンシーン・バトンも、ここでおしまいです。
お付き合いいただき、ありがとうございました!
サイト開設して、一番、日記を更新した日々だったはずです。
これからは、週2の日記に戻りたいと思います。
なかなか充実した毎日でした。
機会があれば、また少しずつ定期的に更新される小話にチャレンジしてみたいです。