「おめでとう!」
明るい色の瞳の少女は、その色そのものの声で言う。
彼女のイメージは、常に空そのものだな、と僕は思った。
「何が?」
「今日、何の日だか、忘れちゃったの?」
彼女は呆れる。
「覚えているよ。
僕の誕生日だ」
事実を告げる。
それだけだ。
今日は、誕生日。
「ちゃんと、覚えていたのね。
感心、感心。
だから、おめでとう!」
彼女はにっこり笑う。
よく晴れた青空のような笑顔。
「何を祝うのか、僕にはわからないな」
僕は苦笑した。
「あなたが生まれてきたことを!」
「僕が生まれてきたこと……。
嬉しい?
君にとって、幸い?」
「そうよ」
彼女はうなずく。
「やっぱり、わからないな」
「誕生日には、おめでとうって他人に言われるものなのよ」
「らしね。
でも、僕にはわからないんだ。
今日は、誕生日かもしれないけど。
ごく普通の日だよ?」
「素直にありがとうって言いなさいよ!
おめでとうって言われたんだから」
「形式的だね」
「言葉にしなきゃわからないことって、いっぱいあるもの!
わたしは惜しんだりしないわよ」
空色の瞳は、僕をにらみつける。
「ありがとう」