並木空の記憶録

「紅の空」の管理人2の備忘録

Bブロック感想

 自分の実力を棚に上げて好き勝手書いています。
 ネタバレに考慮していません。




B01 異端審問官と異端の聖女
 ユスティティアの聖女っぷりにメロメロになりました。
 聖女と呼ばれるのが当然なほど完璧な聖女でした!
>彼女は壊れたオルゴールそのままに、この言葉を繰り返し続けて居るのだ。
 嘘をつけない聖女らしい受け答えだと思いました。
 壊れたオルゴールという表現が良いですね。
 聖職者の腐敗は、想像以上のものでした。
 最後まで読むとどんでん返しがあって、全ての謎がピタリと解決するのが爽快感がありました。
 また別の話として語られる教皇としてのオールドウの話も読んでみたいと思いました。


B02 誰か
>そりゃこの怠け者の心臓のせいさ。よくある話だから同情は結構だ、たまたまはずれくじをひいて生まれてきたってだけのことだもの。
 僕の軽口が小気味良いですね。
 そう長くないであろう人生に諦観しているのがこの年頃の少年らしくて好きです。
 隣に相憐れむような美人が越して来たら、好奇心旺盛にも覗きこみたくなりますよね。
 彼女の命は僕のそれより先に潰えることが分かったら、不幸だと同情したくもなりますよね。
 それなのに仲間だとは思ってくれないのは切ないですね。
 ときどきの微笑みがきれいだから、あの車が来ることを僕は祈るようになったんですね。
 けれども祈れば祈るほど、あの車は来ない。
 ようやくやってきたら、部屋は炎上。
 僕は誰かが玄関から出て行くのを期待している。
 余韻を残したまま作品は終わってしまいました。
 僕と同じようにどちらが出てくるのか、期待して見つめています。


B03 <激情>の魔女
>まだ年若い、齢二百程度の小娘魔女だ。
 魔女様は何歳になれば妙齢になるのでしょうか?
 二百年程度で小娘だなんて。不老長寿のようですが。 
 寂しがり屋の魔女様、良いですね〜。
 なかなか素直になれずに、森で隠遁生活を送っている。
 魔女ごとに色んな能力を持っているという設定が良いですね!
 <激情>の魔女は豊作をもたらすだけではなく、気持ちを暴くために嫌悪されるなんて可哀そうです。
>「僕が大きくなったら、お嫁さんになって!」
 プロポーズです! イル少年、大胆ですね。
 <激情>の魔女だからこそ迷いですね。本物の愛かどうか、分からない。
 だからこそ二人には離れ離れになるという選択肢しかないのですね。
 イル青年は<激情>の魔女のことをよく解っているようですね。
 きっと後悔はしないと思いました。


B04 サンシャーラ
 両親を失い、妹まで死によって奪われたユーリの憎しみの感情が前面に出された作品でした。
 たった一日しか猶予がないのがより憎悪をかきたてられる。
 盛大な葬式を経て二度目の死を迎えるはずが、そのふつうすら許されなかった。
 可哀そうという言葉がうすぺっらに響いてしまうぐらいユーリの気持ちは辛いものです。
 異能に目覚めたユーリがしたことは妹とその間にあった日常を焼き払うことだったのは切ないです。
 すべてを無に返してしまいたい。
 二度と奪われない。
 それは自分自身の死を意味するということが皮肉ですね。
 サンシャーラになった少女は、家族を失った代わりに一族を手に入れたのですね。
 孤独にならずにすんで、そこに一片の救いがあったなと思いました。


B05 人類に炎を取り戻してくれたペンギンのお話
 お人よしのゲオルグさんは断れなかったんですね。
 3ヵ月経っても手掛かりが見つからず焦っていたはずです。
 そこに現れた奇妙な動物。
 TLをにぎわした“ヤンス”ってこれか!
 実際読むとキュートですね。
 海で泳ぐ練習をして、空も飛べるようになったのはスゴイですね。
 それに付き合ったゲオルグも流石“お人よしのゲオルグ”です。
 二人の絆が深くなっていく過程とか掛け合い漫才のような会話が面白かったです。
 最後は文句なしのハッピーエンド。


B06 闇盗人
>闇の国にはひとりの娘がいました。
 そこから語られるのはおとぎ話ではなく、真実のお話。
 神の火が奪われたので娘は追いかけ続けて、ようやく盗人を捕まえることが出来た。
 そこからのどんでん返しが驚きでした。
>「この国に、君と僕以外にはもう誰もいないよ」
 衝撃に事実ですね。
 まさかそんな展開になるとは思わなかったので意外で良かったです。
 おとぎ話の終わりとお姫さまは解放されるのがリンクしているのが良いですね。
 お姫さまがちゃっかりとしていて、可愛かったです。
 優しいところもあって、男じゃなくても手に入れたくなるのが分かります。

 
B07 魔法使いの弟子と赤の受難
 恋は盲目ですね。
 私だったら、とっくに覚めています。
 重度の変人実験馬鹿に付き合っていたら、いくつ命があっても足りなさそうです。
 ユリは懲りていないようですが、それに付き合うオリガが本当に“受難”ですね(笑)
 巨大火ガエルの登場は驚きました。
 人語を喋る赤ガエルはおまけだったんですね。
 バトルの合間に魔法式を読み解くオリガが大変そうです。
 実戦さながらの修業はハードですね。
 天才と称されながら、弟子を複数取らない理由はその辺にあるのでしょうか。
 無事に魔法式が発動して良かったですね!
 ユリが人間に戻って本当に良かったです!
 バトルシーンからずっとハラハラしていました。
 ラストシーンがユーモラスで、これがオリガたちの日常なんだなと思いました。


B08 クルーム・ルージュは屍に帰す
 最後まで読むと出だしの火事のシーンが繋がる。
>気がはやったのでしょう
 というのも伏線ですね。
>『世に事故死とされた第一王子の、真の死因を探し出してほしい』
 第三王子からの依頼が話の中心軸です。
 まるで事故死ではなかったかのような響きに、のめり込みました。
 今まで誰もが真相に辿り着けなかった。
 それがこんがらがった紐をするりと解いてしまう話の展開にどっぷりと浸かりこんでしまいました!
 屍炎という不思議なモチーフが作品に彩りを与えていました。
 ルージュにしか目に映らないそれらがルージュの感情に寄り添っているように思えました。


B09 狐の嫁入り
 後半に入ってお紺視点に切り替わると、謎が全て解けます。
 肉親がおらずに、お稲荷様のお使いだと言われたのも納得の話です。
 忘れた振りをして生きるのは想い出がある分、辛いことでしょう。
 その記憶が優しい記憶であればあるほど。
 それでも太吉さんと添い遂げていくために、忘れていくのですね。
 狐の嫁入りのタイトル通り、ラストシーンに雨が降るのですが、それがお紺の泣き笑いのような気がしました。
 太吉さん、本当にお人好しですね。
 そんな人に助けてもらえたお紺は幸福ものですね。
 火事の祠に迷わず飛びこんできた太吉さんとの出会いのシーンは印象的でした。


B10 Kindling !
>せめてこの世界の話しをしろ!
 の突っ込みはメタですね。
 その後にも出てくるファンタジーには相応しくないメタ発言。
 思わず失笑してしまいました。
 女の子のお洒落精神は、同じ女性としても分かる気がしますが(笑)
 一着しかないなら、より大切ですよね。
 エリュとアルカは強いですね。
 だからこその掛け合い漫才な会話のやりとりが小気味良いです。
 【暴れ屋】【鳥のホネ】【飲んだくれ】と盗賊側には二つ名しか出てこないところも良い雰囲気でした。
 自業自得。勧善懲悪で物語はめでたしめでたしで終わります。
 エリュとアルカの他の話も読んでみたいと思いました!


B11 夜の灯しびと
 食べ物の描写がスゴイです!
 他の情景描写も素直にストンと嵌りこむんですが、特に食べ物がスゴイです!
 とても美味しそうに感じました。
>あたしはおじさんの隣にいるこの時間が、なんでかな、すごく好きだ。
 メイの瑞々しい感性が伝わってきます。
 読んでるこちらもほのぼのとしてきました!
 おじさんは素敵な紳士ですね!
 窮地にさっそうと現れて助けてくれた。
 それだけじゃなく、メイみたいな子どもの話をきちんと聴いてくれる。
 ときめかない女性はいないと思いますよ!


B12 キタキタ
>秘密とは等価交換です。
 静かな語り口で告げられる不穏なフレーズ。
 私の日常を淡々と語られている中で、妙に引っかかった言葉でした。
 それが最後まで貫かれているとは、初見では気づきませんでした。
 読み進めていくうちに、これはホラーだということ気づいてしまいました。
 私の周りで焼身自殺が増えていく。
 キタという音、もう言葉として捉えられない音がしてくるような気がしました。
>ガソリンをまいて、火をつけるのです。
 恐怖がMAXになりました!
 怖いです。
 今にもキタという音が聞こえてきそうでした。