都には毎日、伝令が届く。 戦勝報告ばかりに、群臣たちは浮き足立つ。 長かった戦が、華々しい終わりを迎えようとしていた。 戦場に関わらない者にとって、自軍の損害はただの数字だ。 人間の命ではない。 一つ一つに同情を寄せていたら、気が狂ってしまう。 戦争は大きな消費行動だった。 命、武具を始めとして、市場が活発化する。 ほどほどであれば、支出が少なく、大きな利を得られる経済活動だった。 人民の思想を制御するのもたやすい。 国内の不満を外敵への脅威に変えるのだ。 結束力も高まる。 勝ち戦は、良いこと尽くめだ。 ホウスウはためいきをつく。 届いたばかりの書簡を卓の隅に押しやる。 「もうすぐ終わります」 祈るように指を組み、呟く。 果たせなかった夢が近づいていた。 志半ばで倒れた父と兄の描いた夢が、すぐそこまで来ていた。 犠牲はまだ続く。 早く、早くと天に祈る。 一刻でも早く、と戦争の終結を祈る。 直接、指揮ができないのが悔やまれる。 戦場が遠すぎる。 また家族を失ったら、自分は立ち続けていられるのだろうか。 灰色みが強い茶色の瞳が書簡を見つめた。 (建平三年、色墓の戦い:鳥陵皇帝フェイ・ホウスウ)
毎日、一題ずつ答えていきたいと思います。
長さはこれよりも、心持ち短め? かな。