並木空の記憶録

「紅の空」の管理人2の備忘録

■もうすぐ果てる身体

 殺されるつもりなどなかった。
 生きて、生きて、生き抜くつもりだった。
 死は遠く、自分にはないものだったと思っていた。

 それが

 今

 ここにある。

「そろそろ、決着をつけましょうか。
 晩ご飯に間に合わなくなってしまいます」
 緑の瞳を子どもが微笑む。
 自分の半分も生きていない子どもは、楽しげに剣を鞘払う。
 一閃。
 稲妻のように早く、癖のある剣筋がライカイを斬る。

 死は遠いものだと思っていた。
 それが目の前にある。
 ここで死ぬ。
 現実感のない現実だった。
 都からこんなにも離れた異国で、果てる。
 認められるはずもない。
 ライカイは曲刀を握りなおす。

(建平三年、色墓の戦い:玉棺王ギョク・ライカイ、鳥陵右将軍シ・ソウヨウ)