並木空の記憶録

「紅の空」の管理人2の備忘録

Eブロック感想

 自分の実力を棚に上げてのネタバレ感想です。
 思うままに書いているので、読み違えていたらごめんなさい。






E01 会長の戸隠〜高原学園生徒会記録〜
 兼彦センパイのビジュアルが好みなんですけど!
 いきなりキュンッときました!


 登場人物が多い中、一人一人の説明が丁寧なので、物語の中にスッと入っていけました。
 天岩戸のオマージュですね!
 展開が読め、安心して先に進められました。
 みんなに慕われる生徒会長さんは素敵ですね!


E02 ヒロイック・ガーリッシュ
 あゆりは付き合いがいいですね。
 真夏にゴスロリの格好で、写真撮影なんて苦行ですよね!
 美月との付き合いの長さを感じました。
 二人の関係が垣間見えました。


>「……白は、ダメ」
 話の流れが変わった瞬間ですね。
 どうして白がダメなのか、読んでいて気になりました。
 これだけ妥協しているあゆりがダメだという理由を早く知りたいと思いました。
 その秘密が解けた瞬間、スッキリと納得できました。
 美月は素敵な友達ですね。


E03 明日の行方
 腕時計が亡き父の形見であり、いまも主人公を縛る道具。
 そんな小道具の使い方が巧いですね!
 苦労性の主人公が浮かび上がってきます。
 性格設定の情報の出し方が、とても上手ですね!
 老人と出会って、笑顔が自然に出るようになって本当に良かったです!
 明るい明日が待っているのが暗示されて、もっと生きやすくなったんじゃないでしょうか。
 青年を降ろした後の老人のパートには驚かされました。
 まさかそんな事情があるなんて、思いませんでした。
 スゴい展開だと思いました。
 出会うべくして、出会った二人なんだと思わされました。
 筆力が素晴らしいです!


E04 殺人調書記録、あるいは初恋の甘い輝き
 注意マークが必要かな?
 物騒なんだか、甘やかなのか、不思議なタイトルに惹かれました。
 事務的な文書を読み進めていくうちに、ゾクゾクしてきました。
 豊原佳奈江の調書は、まさに狂気。
 ずっと誰かに聴いて欲しかったんでしょうね。
 出会いからこれまでのことを生き生きと語る姿は、怖かったです。
 思い込みが激しい佳奈江の語りは、本当にタイトル通りですね。
 自分だけのものにするために、殺してしまおうと思う発想力は典型的な分、構成力が試されますね。
 物狂おしいほど恋焦がれた佳奈江の話は、とても読みやすかったです。
 釈放された佳奈江のこの後が気になりました。


E05 身代わり
>ここはまるで真の闇に塗り込められたかのように、何も見えない。
 独房に落とされた“俺”はとても頭がいいのですね。
 全く何も見えない中、食料と水を確保するなんて、凄いことです。
 “おっくう”だと言いながら、生きることに執着しているところが強いですね!
 常人なら絶望で気が狂っているところでしょう。
 何も見えない世界は純粋な恐怖が湧くような場所です。


 ある日、光を見つけてしまう。
 そこで明かされる話は、耳を疑うものだった。
 ちょっとやそっとでは信じられないものだったが、嘘偽りがなかった。
 急展開に驚きました。
 “俺”がひたすら不憫です。
 あの時、好奇心を起こさなければもっと違った展開になったのでしょうか。
 それとも、運命だったのでしょうか。


E06 娑婆電光クロスロード
 不思議な語り手ですね!
 独特な“わたし”の語り口に呑みこまれてしまいました。
 なにもかもお見通しの“わたし”が説明してくれるのは、俄かには信じられない話。
 物の怪と人が出会い、ただすれ違っていくだけ。
 特に悪いことをされるわけじゃないのが、特徴的ですね。
 夜がないせいでしょうか。
 明るすぎる街の中が終わる頃、世界が一変するんでしょうか。
 気になるところがたくさんあります!
 魅力的な語り手にやられました。


E07 暗夜航路 Eclipse route
 ルルールの無邪気さが残酷ですね。
 竜、いえ“ヒュモノブレス”でしたね。


 ファンタジックな世界観の予想を裏切り、硬派なSFでした。
>鱗の身分証を剥奪されて二年が過ぎた頃
 と、さして説明がない中、始まる物語はドキドキしました。
 どんな世界が待っているのだろうか。
 次々にやってくる展開は目まぐるしく追いつくので精一杯でした。
 めでたしめでたしの大団円になるような希望のある終わり方で良かったです。
 途中、主人公が見捨てる側に立つかも、と思える箇所があったので。
 まだ旅の途中ですが、彼らなら上手くやっていけそうだと思いました。


E08 電子レンジ、ひかる!
>そして叔父さんは馬鹿だったのです
 読点がないのはワザとでしょうか。
 なんとも切ない一文です。
 事実をありのまま語りました、といった雰囲気で。
>彼の場合は本当に邪魔な場合がたびたびありました。
 地の分でここまで書かれる主人公が可哀想だなと思いました。
 それぐらい序盤でキャラクターが立っていました。
 柔らかな語り口調で辛辣に切り込む筆力が素晴らしいです!
>「天才児なんて二十歳すぎればただの人です」
>「じゃあ二十歳前にとればいいじゃん」
 二人のやりとりが生き生きとしていて読んでいて楽しかったです。


 それにしても二人で書き上げた宿題は面白いですね。
 発想が伸び伸びとしていて、その気ままさが素敵でした。


E09 光の先へ
 光のカーテンが降ってくる情景は綺麗で、それを隔てての魔物とのやりとりは美しかったです。


 “生きる”って何なんでしょうね。
 飢えからも、怪我からも、遠ざけられて、ある種のユートピアですよね。
 そこで暮らすメイファの孤独感は切ないです。
 最初はメイファと魔物は意思の疎通が出来るものだと思っていました。
 それが実は一人芝居だと分かった瞬間、世界ががらりっと変わったような気がしました。
 タイトルの『光の先へ』と進むのは生命を散らす行為だと分かっていても、一歩踏み出したメイファの心境は胸に突き刺さりました。
 “生きる”ために歩き出した彼女を知る者がいないのが、何ともいえない読後感を残しました。


E10 彼は暗い夜雨の中に差し込んだ、一条の月の光のようだった
 詩的なタイトルが美しく、それ故“死”を待つ私が散文詩に紛れ込んだように儚げに見えました。


>ここで終わりにしよう。
 全てから逃げ出した私が最後に望んだこと。
 雨の中の紫陽花の描写が美しく、目に浮かぶようです。
 疲れ果てた私が緩慢な死を望むのも辛いです。
 迎えに来たカティスの手を取る主人公の心の流れがいいですね。


 けれども、物語の展開は残酷です。
 人は変わっていく生き物です。
 どんなに願っても、叶わないこともあります。
 双剣を構えた主人公の心境は揺るぎのない強さがありました。
 だからこそ、カティスとは敵対して欲しくなかったです。
 誰もが幸福になれる道はなかったのでしょうか。