自分の実力を棚上げ。
ネタバレありの思うままの感想です。
読み違えていたら、ごめんなさい。
D01 セイシした闇の中で
エレベーターの中でたまたま居合わせた“私”。
語り口がいいですね。
どこか穏やかで、心配をしてくれているのが良かったです。
闇の中で、不安が紛れますよね。
それにしてもやられました!
薄々、“私”は闇の中でしか存在できない人物だとは思っていたのですが。
繰り返される“4.5秒”が良いアクセントになっていました。
エレベーターから降りることができて良かったですね!
D02 ずっと一緒でいてね(※注)
怖っ!
粘着タイプのお話ですね。
双子なんだから、全部一緒じゃなきゃ気がすまないのですね。
“大切な”と繰り返される文章に狂気を感じました。
柔らかな文章だからこそ、ひたひたと迫ってくるホラー。
独特な雰囲気に呑まれました。
“わたし”は幸せになれるのでしょうか。
後悔はしなさそうですが。
D03 ね、あなたの笑顔も食べたいな
>綺麗な光の蝶になったそれを、両手で夕暮れの空へ放った。
美しい情景ですね!
想像してみると、しんみりとしてしまいました。
夕方から夜に変わる姿が華やかに描かれていて素敵でした。
光り虫の設定がいいですね!
魔法で何でも出来る世界という舞台設定も良かったです!
それでも極力使わないでいる主人公と一緒に、懐炉を抱えているような気分になりました。
D04 人間スープはキスの味がした
>一年ぶりに触れる異性の肌は、寒気がするほど甘美だった。
艶めいた一文ですね!
ドキッとしました。
さりげない描写の中、二人の関係性が暗示されているようで巧いなと思いました。
最初、人間スープという響きが不吉な感じがしました。
読み進めていくと、それは甘やかな雰囲気に変わって驚きました。
キスの味、というタイトルに納得です。
僕が間に合うといいですね!
どんでん返しが利いていますね!
D05 嘘つきな唇(※注)
血の繋がらない姉弟もの!
ライの歌声とピアノがキリィにとって救いなのが切ないです。
>「……残酷なひとだ、姉さんは」
ライの表情が浮かんできそうです。
吐き捨てるのではなく、呟くでもなく、発せられたセリフなのでしょうね。
語られない感情に色々と想像が膨らみました。
二人の気持ちがすれ違っているのが、しんみりとします。
幸せになってほしいと思うのですが無理そうですよね。
D06 佳人薄明
ファンタジーなのに、しっかりとした時代小説として読める!
舞のシーンは唸りました。
美しく強い情景が広がりました。
亡き姉の存在は大きいですね。
天賦の才と言わしめるのだから、素晴らしい舞手だったんでしょうね。
タイトルの佳人薄明はわざとでしょうね。
作者さんの意気込みを感じます。
薄命だった姉を慕う私の気持ちがひしひしと伝わってきました。
D07 Over the Rainbow:いつか輝ける虹の下で
これは!
逃げる気満々のフェイクを入れてきましたね!
英語の成績が地を這うような自分は、素直に機械翻訳に頼りました(笑)
>過去に何度も書こうとして、その度に、書きかけのまま破り、焼き捨てて来た手紙を。
最初のこの段落が期待をさせますね。
今日こそ手紙を書く、というのが胸を痛めます。
どうして今まで書けなかったのか。
書きかけのまま破った、そんな倫太郎の気持ちを思うとやるせないです。
今度こそ、想いと共に手紙を届けられるといいですね!
D08 R18-G
不思議なお人形のお話でした。
次々に受け継がれていく人形はただ時を過ごしていくだけ。
最初の持ち主が読んだ名前も忘れ去られ、姿まで変えられていく。
それを淡々と語り継いでいくのが印象的でした。
時間は残酷ですよね。
“あたし”の内面は何ひとつ変わらないのに、周囲の環境は変わっていく。
今も“あたし”が偲ぶのは最初の持ち主だということに寂しさを感じました。
これからも“私”は受け継がれていくのでしょうね。
それが微かな希望に思われました。
D09 夏の虫
とうがねぶんぶん、軽やかな響きの名前ですね。
恩返しにやってきたのは、虫だった。
ちょっと俄かには信じられない現実が初彦さんの前で繰り広げられる。
とうがね某と初彦さんの会話が生き生きとしていて良かったです。
救われない話ですよね。
初彦さんがかわいそうだと思いました。
暗闇の中、屋敷に押し入ったのは、というどんでん返しが巧いですね!
冒頭と繋がって、光が当たったかのように伏線が回収されました。
D10 ひかりのかみ
ラストに驚きました。
まさに衝撃の結末ですね!
ハンナが啓示を受けるシーンはとても素敵でした。
神が無力な娘を選び出す情景が印象的でした。
>見たことなんてないはずなのに、それらは突如記憶の中に現れたのである。
天啓とは突然のものなんですね。
納得してしまうのも、当然ですよね。
神の力は偉大だと思いました。
D11 多眼の種
マリナとセスの関係が好きです。
明るく元気で、ちょっとお節介なマリナ。
そんなマリナを眩しく思うセス。
ちょっと不自由な暮らしも『多眼の幸』によって一変してしまうのは、痛ましいです。
限りある時間の中で、模索するセスの必死さに心打たれました。
ラストシーンの情景描写は素敵でした。
微笑むマリナは殉教者特有の静謐な美しさが漂っていました。
D12 ゲーム世界に転生して神になったと思ったが、どうやら勘違いだったようです。
死後の世界は高い難易度のようですね。
ゲーム世界での死は数値だけのものでも、記憶に刻み込まれる。
死んでまでゲームを続けるなんて、短い人生の中に喜びは少なかったようですね。
無限にループするシナリオを変更できる日が来るのでしょうか。
それまで続く戦いの日々を思うと、切ないです。
コピーは本物を凌駕できるのか。
ゲームをクリアした後、どうなるのか気になりました。
神となって、自由な世界を作れるとしても虚しくはないのか気がかりです。