並木空の記憶録

「紅の空」の管理人2の備忘録

覆面作家企画4 Dブロック感想

 ネタばれに考慮しているつもりですが、考慮し切れていません。
 未読の方は注意。


 推理のきっかけメモつき*1です。
 難しい漢字の基準は「自分」です。特徴的な熟語、言葉選び、変換をしている場合も、難しい漢字に入れていることがあります。

タイトル考

 全84作品中、タイトルに「坂」が入るのは4作品。
 うち2作品がDブロックです。


 また、タイトルに「〜」の記号を使う作品は2作品しかなく、その2作品ともDブロックです。


 タイトルに「。」が入る作品はD06のみです。

印象

 作中に人外(鬼)が出てくる作品が4作品。
 一人称が7作品、うち現代もの(現代FTも含む)が6作品。内訳は男性視点4、女性視点3です。


 現代もの、現代FT、和風FT(3作品)があるので、日本が舞台の作品は9作品。
 なかなかの偏りです。1ブロックに12作品しかないのに。

注意書きがないけれど、注意*2

 D04 社会性R‐15*3
 D06 殺人未遂 社会性R‐15*4
 D11 社会性R‐15*5



D01  帰らずの坂 (和風FT 三人称)

 《》でルビを振る。
 和風(平安時代)FT


 陰陽師安倍晴明も登場の、王道展開の和風FTですね!
 ライトな感覚と文体でつづられていて、読みやすかったです。
 惟尹が好青年すぎる! 魅力的でした。
 「帰らずの坂」というおどろおどろしいタイトルに反して、死者ゼロ。
 物語は二転三転として、絶体絶命のピンチ? ってところで、見せ場と良いところをかっさらうのは安倍晴明! まさにヒーローですね。
 面白かったです。

D02  サヌザと共に 〜草原の道〜 注 (異世界FT 三人称)

 「◇  ◇」場転記号。
 ルビ。
 辿りつく筈、凌げて、遮る、蹲る、訝しみ、熾しなど難しい漢字の使用。
 出遭って、無いなど特徴のある変換。


 「旅人」の年齢、性別もわからないまま話は進んでいきます。
 意外に引っかからずに読めたのは美しい文体のためですね!
 主人公は、「髪挿し」です。そう思いました。
 こういう物にまつわる話が大好きなので、読んでいてドキドキしました。
 滅びの前夜の宴の情景が美しかったです!
 そして、それに重なるように描かれる砂漠の夜の舞が綺麗でした!
 最後に一言。
 巨砂鳥、欲しい!! 旅しないけど!!

D03  ナキオニ (現代FT 一人称)

 隙間風、摘まんで、覆う、頷いて、曖昧、僅かななど難しい漢字を使用。
 ざざと、ぐずぐずと、ぐっと、だんだんと、オノマトペはひらがな。


 なんて良い話なんだ!!
 般若の面を取って、鬼が事実を告げるシーンが好きです!
 すとんと落ちたオチで、そこまでの展開を含めて、素敵でした!
 鬼がずっと泣いていた理由もわかります。
 最初は「コンビニ弁当なんか嫌だ、〜」鬼なのに、贅沢者だな! と思ったんですが、読み進めてみると、その言葉の深さに気がつきました。
 胸にじんわりと来る話でした。

D04  黄昏ストーキング! (現代もの 一人称)

 崩壊、些末、溢れて、煩いなど難しい漢字を使用。
 ? の後にスペースで空白を取らない。
 ―を一文字分だけで使用。


 m9(^Д^)プギャー
 こうですか!? わかりません><


 小道具がしっかりとしていて、「ありえそう」な空間を構築していて、どう転ぶのか、わくわくしながら読み進められました!
 オチも(主人公的には)笑っちゃいけないんだけど、笑えました。
 >托卵反対。
 が、いい味でした!
 主人公の性格がかわいくって、テンプレ的な思考パターンと相まって、面白かったです!

D05  払暁 注 (中華風FT 三人称)

 江朴青が江・朴青なのか、江朴・青なのか気になりました。
 字面からいって前者だとは思うんですが、どうして彼だけ三文字なんだろうって不思議に思いました(息子も呂亥だから三字なんですが)。


 国王の庚未がかわいそうだと思いました。
 江朴青も忠義面していながら、忠義者じゃなかったなんて。
 しかも教師だったわけで。首を撥ねられる(敵対勢力に暗殺される)ぐらいの気概で諫言したっていいだろうよ。もしくは奸臣を粛清としちゃうとか!
 自己保身に走ったり、面倒事から遠ざかる……そんな弱さを持っているのが人間で、それを書ききっているのは好感が持てました。リアリティがあって、逆にキャラクターの魅力が増しています。江朴青を否定しているわけじゃないです、念のため。
 この作品は、国王の権力が強固すぎたから起きた悲劇ですねー。
 「禅譲」はできなかったのかな? と、思ったりしましたが、こういうのも「天命」なんでしょうね。
 骨のある中華風FTは良いですね!
 お腹いっぱいになるほど満足させていただきました!

D06  だから私は解放を願う。 (現代もの 一人称)

 …を一文字で使用している箇所が多い。
 綺麗とキレイを使い分け(表記ゆれ?)。


 思いこみが激しく恋に恋する女の子かぁ。犯罪行為に走らないといいけど、なんて読んでいったら、予想を裏切る展開。
 なるほど。タイトルの意味がわかりました。
 お嬢様と奴隷あたりで王道展開? とか、暢気なことを思っていました。
 勢いがある話の持っていき方ですね!
 登場人物全員が個性的ですよね! 本当にビックリしましたー。
 強烈な性格の面々ですが、それでも話が破綻しておらず、主人公の考え方、感じ方が一貫していた(キャラが立っていた)ので、読みやすかったです。

D07  坂道の効果に関する最新知見 〜女性研究者を対象として〜 (SF 一人称)

 大儀、覇気、遺憾、機嫌、不審、騙された、勾配、疲弊など難しい漢字を使用。


 坂道を上ったり下ったりする人、探しに行ってきます!
 グロットがステキすぎる!
 「坂」がない、という設定が面白い! それこそ斬新です!
 タイトルから「吊り橋効果」みたいなものかな? って思っていたんですが、それ以上の効果ですね!
 世界観といい、登場人物といい、文体といい、すごい好みでした!
 近所の坂道でちょっと試したくなりました。

D08  御堂関白の御犬を可愛がる事 (和風FT 三人称)

 古語、名詞にルビ(と思ったら難しい漢字の一部にも振られていた)。
 洩れゆく、など特徴的な言い回し。
 和風(平安)FT。


 藤原道長と安倍清明陰陽師ものにありがちな切った張ったではなく、古典調ですね。
 『宇治拾遺物語』などに入っていそうな雰囲気です(これは、わざとだとは思うんですが)。
 男の子の名前が出さずに、でも情報はチラつかせる。
 まさに古典文学! 重たく、それでいて華やかな雰囲気が素敵です。
 今回のお題の「道」の使い方が巧い!
 こういう使い方はカッコイイですね!

D09  道案内 (現代FT 一人称)

 彷徨わせた、慌てて、掴みかかる、畳み掛ければ、躊躇いがち、瞼、頷いた、逸らした、俯きなど難しい漢字を使用。


 素直で可愛らしい中学生が道案内してくれると思いきや、本当の「道案内」役は別だった。
 ちょっと捻りのある展開が良いですね!
 男の子が桜が好きで、主人公が蝶が好き。それもちゃんと理由があって、明かされる。その流れが淀みがなくって素敵でした。
 男の子が飲み物を探してくるって言ったとき「それはマズイのでは……!」と戦々恐々していたんですが、ハッピーエンドで良かったです!

D10  その道の先にある (現代FT 三人称)

 人名、当て字にルビ。特徴のある人物名。
 「■   ■   ■」場転記号。
 喘鳴、訝しげな、微笑う、譫言、接ぎ穂、僥倖など難しい漢字と特徴のある表現を使用。


 「凪埜倫と久我理世の事件簿」というタイトルでシリーズ化している作品のケースナンバー01を読んだ感じがしました!
 つまり、もっと読みたい!
 設定が面白いですね。「道」が見える少女かぁ。
 凪埜青年は6年後、どんな思いで理世と出会ったんだろう、とか妄そ……想像が止まりません。
 

D11  夏の夕凪、丘の上に寝転びて星を待つこと (現代もの 一人称)

 燻りつづける、膨らませて、俯いた、緩慢、蘊蓄、反芻など難しい漢字を使用。


 羽瑠希、怖いぃぃぃ!!
 「女」だと思いました。うかうかと騙されている「僕」が……!
 再婚するにはハードルが高いと思うんですよ、田舎だし。
 それはさておき、宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』を軸に展開していく、情景はとても美しかったです。
 登場人物もうっかり感情移入してしまうほど、魅力的です。
 平易な表現が多いのですが、展開といい、設定といい近代文学の薫りを感じました。

D12  ハイカラ娘と銀座百鬼夜行 (和風FT 一人称)

 舞台は明治。でも、大正かも。
 尾崎紅葉の名前が出たから、明治のような気がするけど……自信はありません。


 西洋化の波の中、それでも消えない魑魅怨霊。△憑きの書生とお転婆なお嬢様と来たら、ホラーに傾くと思っていたんですが、ユーモア溢れる展開に心が和みました!
 滑稽な展開が良いですね!
 背景の説明がすごくわかりやすくって、引っかからずにすいすい読めました。
 お嬢様の破天荒っぷりが素敵。活動的すぎる!
 それに振り回されている書生さんが、また素敵。
 書生さんの視点は、とても好みでした!

*1:推理はしていません!

*2:基準は自サイトです

*3:2chを知っていると楽しめると思います。VIP板の知識とか

*4:人格障害共依存などに造詣が深いと楽しめるかもしれません

*5:昼ドラなどの恋愛耐性があれば楽しめると思います