並木空の記憶録

「紅の空」の管理人2の備忘録

ダイヤモンド

「ダイヤモンドになりたいの」
 乾いた目がつぶやく。
 喜びも、悲しみもない。
 大きなそのガラス玉が見つめる。
「そしたら、傷つかないですむでしょう?」
 かたくなな殻の内側には、もろい心がある。
 何もかもから逃げたい、と。
 これ以上、苦しみたくない、と。
 少女は言う。
 だから、この世で最も硬い鉱物になりたい、と言う。
 彼女こそ、ダイヤモンドのようだ、と青年は思っていた。
 誰もがうらやむような絢爛の美貌。
 前を歩き続けようとする意志。
 『誰にも征服できないもの』
「火にくべたら、跡形もなく燃えますよ」
 青年は言った。
「ええ、望むところだわ」
 少女は言った。

 本当に、彼女はダイヤモンド。
 何よりも硬い鉱物だと言うのに、火にくべたら燃えてしまう。
 頑強な外側と繊細な中身。

 と言うわけで、続きません(笑)