中華風ファンタジー『鞠(きつ)』です。
あくまで「風」ということで、提出作品である『星龍井戸譚』よりも世界の構築が甘い感じです。
別に和風でも良かったし、和風FTとして読まれてもかまわないぐらいの、ニュアンス的な話です。
加筆修正しました、もちろん。
提出にいたらなかった理由は、もちろん枚数制限に引っかかったんです(笑)
一回、どうにか規定枚数である20枚に収めたんですが、ヒロインの容貌を削りまくったせいか、読み返したときに「私がつまらない」と思ってしまったので、没。説得力のない絶世の美女とか、傾国の美少女と嫌なんですよ。どれだけ綺麗なのか筆を尽くしたくなるんです。
以下、後書き。
最大の理由は作中で死者が出てしまったので、これは“全年齢”ではないだろう、と。
サラッと流したんですが、明らかにお亡くなりになってます。
小学生に読ませても平気っていえる話じゃなくなってしまい、企画にはふさわしくないので、提出は諦めました。
登場人物の名前は
呂 朱鷹→ろ しゅよう
宋 湖星→そう こせい
伊 雨幻→い うげん
命名は厨名さんさんを参考にさせていただきました。
姓は中国で多い姓から、テキトーにチョイス。
湖星だけは、オリジナル。
私の代表作である『鳥たちの見た夢』の主人公のソウヨウと同じ漢字……というか構成が近いのは偶然です。提出していたら、フェイクになっていたかもしれませんね♪
タイトルの意味は、鞠について。
この漢字には、玩具である“まり”を意味し、育てる、おさない、かがむ……という意味を持っています*1。
というわけで、こちらの漢字を使いました*2。
作中、朱鷹がかがんで鞠を拾うシーンが何度も出てくるのは、そういった理由でした。
仕掛け(レトリック)
時系列の混乱が、この話の最大の特徴です。
演劇的かもしれませんね。
ある言葉や動作をきっかけに過去の記憶が差し込まれる。
既視感(デジャヴ)というのを念頭に……親切ではない作りの話になっています。
CSSで現在と過去を色分けしたので、読みづらいと感じた方は一色だけ読んでみるといいかもしれません。
さらに、牢に突っ込まれているのが、最初はわからない。わざとそういう描写にしてみました。
一度、やってみたかったんです。こんな構造の話*3。
前回の覆面作家企画のテーマが「花」だったので、こちらも作中に織り込みました。
しかも茨(いばら)*4!
茨が咲く庭に男女って、どれだけ前作*5と『鳥たちの見た夢』に被ってんだよ……なんて突っ込まれそうな勢いで、また薔薇の花です。
実は時間経過が茨で表現されていたりしています。
子ども時代→蕾の茨
捕虜になる前→蕾の茨
脱出後→開花した茨
再会→紅葉した茨*6
さらに、花をイメージする単語を作中に散りばめてみました。
しかも最初は垣根越しの出会い。鋭い棘を持つ薔薇の垣根で「牢獄」のイメージにも重ねてみました。
さらに「星」と言えば「太陽」「月」「一番星」だ!
という私の独断と偏見により、全部入れてみました。
しかも昼、夕方、夜もねじ込んでみました。
太陽色の鞠が転がってくる。
ここがこだわりのポイント。
最初は、昼も夜もない場所で、それを見るわけです。
最後は、昼間、太陽の下でそれを見るわけです。
最大の黒幕は
朱鷹の姉……。
策士だと思います。
一切出てこないんですけど、そんな人です。
湖星もほえほえ、雨幻もほえほえしているので、緊迫感がなくって、朱鷹もどこか抜けている感じなので、そら恐ろしい作品です。
シリアスの皮を被ったギャグなんじゃないかっていうぐらいセリフのあるキャラクターが平和ボケしています。
この後の二人は
お友だちになれたんでしょうかね?
政局が安定した後に、再訪問しているところから、おわかりでしょうが。
宋家の後継は湖星しかおらず、外部から*7高圧外交を強いられており、旧臣たちは実権のない官職に追いやられ、あるいは失職させられていて、事実上の植民地化をされたわけです。
肝心のお姫様は、本当に箱入りなのでいいようにされています。
それが不幸か幸福かは、非常に判断が難しいところです。湖星の父は野心家だったけれど、器が足りなかった……という設定なので。
時代は群雄割拠に向かっている最中で、ど田舎の小さなクニはどうなるか……、名君に出会えると良いですね☆ というしかないところです。
話がそれましたね。
朱鷹が再訪問しているので、そういうことです。
ほどなく政略的に宋家と呂家は婚姻を結ぶでしょう。現時点で、領土を吸収するのは弊害のほうが大きいので、子どもの代で合併か、長男と次男で分割して統治ということになると思います。