並木空の記憶録

「紅の空」の管理人2の備忘録

「覆面作家企画2」 Gブロック感想

 スローペースながら2ブロック目。
 誰も待っていないような気もしますが、「私が」楽しいので無問題。
 マイペースに行きたいと思います♪


 というわけで、感想です。
 自分の文章力を脇に退けておいての感想です。
 毎度ながら、中辛です。
 ネタばれしてします。
 未読の方&甘口感想以外はお嫌な方は要注意です。





G-01  暗闇にまたたく

 一人称現代ものFT。
 俺は気がつけば不思議な場所にいた。
 何もない、暗い闇のような空間に唐突に現れた二人組み。
 底抜けに明るい少女と目つきは悪いが面倒見の良い青年。

 ずっこけてしまうような少女の明るさにビックリしました。
 これはコメディなのかぁと読み進めていくと、洒落にならないようなシリアス。
 王道展開といえば王道展開なのですが、破壊された街がリアリティがあって、思考の転換を図る主人公の気持ちが自然としているので、上手だなぁと思いました。
 二人組みの謎のある会話もポンポン運ばれて、するすると読めてしまいました。
 難を言えば、主人公の性別がかなり後になるまでわからないことでしょうか。
 男か女かどっちなんだろうって、ちょっと悩んでしまって話しに入り込みづらかったです。

G-02  月の隣

 現代もの。
 同じ高校の同じクラスにいるはずの少年たちは、屋上で改めてお互いを認知する。
 高見千尋と南郷和秀はまったく似たところがなかった。

 人の名前を覚えるのが苦手、という流れが笑えました。
 さすがにそこまで覚えるのが苦手だと困ってしまいますね。
 自然な会話運びに、思わず笑ってしまいました。
 このまま二人は仲良くなって「親友」になるのかな、と思い込んでいたら、まさかの展開でした。
 「意外」「意表」を通り越して「呆気」になりました。
 千尋くんのためにも快復して欲しいと思いました。

G-03  クリスマス・オーナメントと子供と私

 一人称現代ものFT。
 しゃべることができるマネキン『マイケル』は、クリスマスのこの時期、精神衛生がすこぶる良くなかった。
 道行くカップルに「くそ、別れてしまえ。」と思う程度には――。

 最初、男性かなぁ、硬めの女性かなぁと思って読んでみたら、人間ですらなかったという展開に、「おお、なるほど」と納得してしまいました。
 信一くんが可愛くって健気ですね。
 子どもらしい発想で、ツリーの天辺の星を欲しいと思う。
 それを静かに諭すマイケルも、ここでたくさんの人を見てきたからわかることがあるのだろう、と思いました。
 願いを持つマネキンと少年が対話して、やがて別れる。
 二人の願いは結局……叶わないまま。
 しんみりした最後なのだけど、信一少年の決意が色を添えてくれます。
 クリスマスに起きそうな話だけれど、「奇跡」が起きないのが「クールだ」と思いました。

G-04  さいはての星

 異世界FT。
 死を悟った老王は、昔を思い出す。
 感傷にも似た甘さを湛えながら、塩辛い海の景色を思い出す。
 そこで笑っていた乙女の姿を。
 奇跡の代価を――。

 西洋風ファンタジーですね。
 まるで童話や昔話に収録されるような太い骨格のある話に、散りばめられた美しい表現にうっとりとしました。
 海(水)の表現が本当に綺麗で、散文詩を読んでいるような、そんな気分になりました。
 王子と娘の約束は果たされませんでしたが、それほど不幸には思えませんでした。
 死期が近い王が回顧する形を取っているせいでしょうか。
 壊してはいけない脆くも美しい思い出のように感じられました。

G-05  星より甘やかに

 一人称現代もの。
 青年棋士・秋吉には、どうにも頭が上がらない少女がいた。
 先生の娘の文恵。
 少女が小学生のときから懇意にさせてもらっているものの……。

 私は将棋に関してあまり知らないのですが、苦もなくするすると物語入っていけました! 説明が上手なんですね!
 文恵ちゃんが可愛いです。明るくって、無邪気で、それでいてちゃんと抑えるところは抑えているという感じがして、キャラクターが生き生きとしていました。
 さりげなく配されている「和の香り」も素敵です!
 「星」の使い方が上手で、金平糖を食べてしまうのが良いですね!
 次の対局で、秋吉さんが勝てるといいですね♪
 最後はタイトルどおりに「星より甘やかに」でした。
 うん、ご馳走様です!

G-06  花に星

 異世界FT。
 花街で育つ小さな少女・シャナ。
 母のような姉のような存在の遊女・ライカ。
 その元に通う魔術師・アウグ。
 シャナの知る花街は華やかだけれど、独特の色がある。

 一気に引き込まれました。
 ライカが艶っぽくて、麗しいですね。遊女らしい遊女で。
 アウグとは、大人の関係という感じですね。
 銀のかんざしという小道具も作中で効いていて、かっこ良かったです!
 花街に通う理由も、最後で解決。
 伏線ってこんな風に張り巡らせるものなんだ、と勉強になりました!
 ライカを二人で迎えにいけると良いですね!
 シャナのいたいけなところが魅力的でした〜!

G-07  峠の我が家

 SF。
 二百年前、最後の移民船「あかね」は『ホーム』と呼ばれる星にたどり着いた。
 人々は開拓にいそしみ、ようやく自分たちの軌跡を振り返る余裕ができた。
 アールは文化庁遺跡保存課に配属されている。
 エルと共に。

 SFなんですがスラスラと情報が入ってきて、作者さまの筆力がうかがい知れました〜!
 いやぁ、設定がスゴイ!
 最後の移民船の設定もしんみりとした感じですが、その船が乗せてきたものも素晴らしい。
 旅愁に駆られるような作品でした!!
 アールが○○だとは思わなかったので、それも驚きました。よく見れば、ヒントは出ていましたね。
 『ホーム』という名前も良いですね。
 故郷喪失の話は好きなタイプなのですが、この作品は本当に淡々としていながら味わい深くって、枯淡というのでしょうか。
 全体を通して、素敵でした!

G-08  勝負

 時代小説。
 江戸時代、父母の敵(かたき)を追っている新之助。
 家督を継ぐための敵討ちだったが、気がつけば十年の歳月が己の身に降り積もっていた。
 ふと迷いが心の中に生じた。

 キリッとして素晴らしい作品ですね!
 武士が出てくるような時代小説を普段読まないのですが、面白かったです!
 新之助の心の流れが丁寧で、無骨で、漢らしくって素敵でした。
 豊橋の生きるのに厭いたような、あるいは全てに怒っているような視線が感じられました。
 新之助を通してしか敵のキャラクターはわからないのですが、とっても魅力的でした!
 最後の二人が対峙するシーンが最高にカッコいいと思いました!!

G-09  金曜日の屋上

 現代もの。
 1月5日の夜、ベルボーイの友一は風変わりな客を匿う破目になった。
 客の名前は西尾誠次郎。映画配給会社の社長だということを、ヒステリックな秘書の口から聞くことになる。
 お騒がせなお客様が起こすことはそれだけではなく――。

 ちょっとコメディで、しっとりと落とすのかと思いましたが、良いですね〜。
 西尾はたがが外れたキャラクターなのかと思ってましたが、チラッと見えた横顔が素敵でした。
 ネオンが輝く屋上で語られるにふさわしい話でした!
 話の舞台設定といい、キャラクターといい、実に効果的でした!!
 話に無駄がないというか、話の広げ方も大きさもちょうど良くって。
 映画を通して盛り上がる二人が面白かったです。

G-10  星色謎解き

 ミステリー。
 小学六年生の祐介は何よりも本が好き。
 幼なじみの少女・京は体を動かすほうが得意。
 そんな二人の元へやってきたのはA4サイズの一枚の紙。
 学校を舞台に放課後のミステリーが始まった――。

 お使いゲームのようなミステリーの犯人は誰なんだろう、ってずっと考えていました!
 謎が解けてスッキリしました!
 いまいち星図が詳しくない私には、ちょっと地図が欲しかったかなぁ、と思いました。
 せっかくの設定なのに学校の見取り図などがないために、少し混乱。
 贅沢を言うならという感じなので、この状態でも十分に楽しめました。
 祐介くんがナイショになった謎を解く日が楽しみです!

G-11  その手に星の砂を

 SF。
 資源の乏しい星に生きる少年・シイト。
 滅びかけた世界で出会った少女・アイラは、初めて目にする富の象徴だった。
 家出中の少女を送り届けると、そこには見たこともないような環境が広がっていた。
 本当の自分を知ってほしいと言う少女に、シイトは招かれたのだ――。

 最初は異世界FTかと思って読んでいたんですが、「宇宙」という単語に慌てて頭から読み返しました。
 確かに伏線が張ってあって、SFですね。
 この世界がどうなっているのか気になりつつも、少年少女の出会いの美しさにときめきました。
 物質的な豊かさを目にし、体験しても、変わらなかったシイトが素敵でした。
 最後に少女に渡したものにハッとしました。
 良いプレゼントですね!