夕暮れの中、不釣合いな二つの影が歩く。 とぼとぼと。 どこか寂しい足音を、互い違いな言葉が埋める。 今日の出来事を振り返っては、微笑み交わす。 過去ばかりが話題に上るのは「今」が楽しくないからだ。 帰りがたいと思うのは、お互い様だ。 自然と歩みは鈍くなる。 理由をつけては遠回りする。 夕焼けの中、不釣合いな二人はどちらも頑固だから寂しさを口にしない。 気がついていないはずはないのに。 恋人同士と呼べるような関係ではないから、夕方は家に帰る時間。 送り道。帰り道。寄り道。 それでも星が輝く時間になれば、足は家に向かう。 取り決めたわけではなく。 破ったところで、誰も怒らない。 それを知っていながら、二人は自分の影を見つめながら、歩くのだ。 今日は楽しかった、と話しながら。 どうしようもない別れ道。 二人の帰る場所は違う。 いつか、同じ場所へ帰る日が来ればいいのに。 別れの言葉を口にしなくてすむ。「また、明日」 手を振る。 小さくなっていく背中を。 離れていく影を。 何度、見送るのだろう。 夕暮れ小焼け。 真っ赤な太陽が空に溶けていって、夜が来る。 影を探すのは困難だ。 憂う時間は終わり、悲しむ時間の始まりだ。 夕暮れの幻はもう見えない。
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並木空の中で、一番美味しい片思いの様式美です。