「ねぇ、お願いがあるの」
ほらきた。
また、おねだりだ。
「あなたにしか頼めないのよ」
可愛らしく彼女は言う。
自分のことを可愛いと自覚している『女性』ほど厄介な存在はない。
と、僕は思う。
「ダメかしら?」
無力で、幼くて、か弱い。
そんな振りして彼女は言うのだ。
僕よりも二つも年上なんだから、そんなはずないのに。
「どうして、僕なの?」
「私のお願いを叶えてくれるのは、あなただけだもの。
頼りにしてるのよ」
彼女は大真面目な顔で言う。
そんな表情で言われると、もっともらしくて、騙されてしまう。
でも、彼女の周りには頼りのなる大人がたくさんいるのだ。
まだ子どもでしかない僕を頼るはずなんて、ない。
都合よく使われているだけだ。
わかっている……んだけど。
「今度は、どんなお願いなの?」
僕は言ってしまう。
途端に、彼女は笑顔。
春が来ていっせいに花が咲いたときのように、パッと喜びを浮かべる。
笑う彼女は、やっぱり可愛い。
「ありがとう!」
嬉しそうなその笑顔のためなら、これからの苦労も報われるかな。って思ってしまう。
引き受けて、後悔することの方が多いのに。
恒例ですが、続きません〜。